ブタ釜ものがたり

この世で最後に作られた一台を使って
私がここ、座間でコーヒーノートを開業した一番の理由は、この「ブタ釜」にあります。

その「顔」を見てもらったらすぐに分かってもらえるんですけれども、
ブタによく似た形をしているでしょう?

ブタ釜ものがたり

正式名称は「R-27A(直火式)」といいますが、こんな名前で呼ぶ人はいません。
コーヒー業界では符牒のように「ブタ釜」と呼んでいますので、私もそう呼んでいます。
みなさんも「ブタ釜」と呼んでやってください。

旧式というか、古い型式の焙煎釜で、現在では製造メーカーもなくなってしまって製造されていません。いったい、どれくらいの数の「ブタ釜」が現役で活躍していることやら…。

さて、この「ブタ釜」は座間市にお住まいだった富士珈琲機械製作所の寺本一彦社長(故人)によって開発・製造されたものです。
そして、コーヒーノートの「ブタ釜」はこの世で最後に製造された一台なのです。

それまで寺本一彦社長との親交はありませんでしたが、自由が丘の「十一房珈琲店」で修業していた時、そこで使っていた「ブタ釜 (半熱風式)」のメンテナンスのために立ち寄って下さった際、寺元さんが乗って来こられたバイクが座間ナンバーであったことが会話の糸口となり、毎日座間から当時中目黒にあった会社までバイク通勤なさっている事などを伺い、私も「座間からこの店まで毎日通勤していること、自家焙煎店を開業するために現在修行中の身であること」などを話したのでした。

ブタ釜コーヒー物語1ブタ釜コーヒー物語2ブタ釜コーヒー物語3

寺本氏の訃報に接したのは、その後何年か過ぎてからのことです。

コーヒーノート開店以来、この座間を「ブタ釜」で作ったコーヒーの香り(ノート)漂う街にしたいと願いながら、毎日焙煎に勤しんでいます。

最後に生まれた「ブタ釜」の末っ子は、座間のコーヒーノートにいます。